えー、なんで俺にラジオの取材なんすか?
はぁ・・「この前の大火事で子供2人を助けた勇敢な消防士はいったいどんな人?」という問い合わせが来てるって?え?このラジオ局にですか?えー、なんか信じらんねぇ(苦笑)。
いやいや、答えたくないとかじゃ全然ないんですけど。
俺なんかでいいのかな、っていうか、なんもうまいこと言えないけど、いいんですかね?
消防士になった理由、ですか。そんなとこまでさかのぼるんだ、ふふ(笑)。
えーっと、単純に、アタマが悪いヤツはカラダを使ったほうがいい、っていう親の教育方針です。
っていうのはウソだけど(笑)、や、でも、ちょっとは当たってるかな。
1メートルが何センチかとかもわかんなかったし、英語とかは好きだったけど、とにかく計算とか暗記とか苦手だったし。だから勉強が必要な仕事は絶対ムリだったとは思う。
ただ、イコール消防士、っていうのには、確かに飛びすぎだよね(笑)。
多分、運動は得意だったし、ガタイが良かったから、カラダを動かす消防士っていいかな、って思ったことと、あと、結構、俺、こう見えて世話好きなんですよ。
って、自分で言うことじゃねぇか(笑)
え?十分世話好きに見えるって?
いやいや、それはこの前の救出があったからそう見えるだけでしょ。
素の俺を見て、記者さん、そう思ってくれたかなぁ(苦笑)。
俺、誤解されやすいっていうか、冷たく見られるときが多くて。
だから、友達とか家族の介抱とか世話とかすると、本人同士は当たり前って思うんだけど、周りはすっげーびっくりするみたいで(笑)。ま、そんな性格ってこともあって、単純に「消防士」っていいかなって思いついたら、もう他考えんのめんどくさいし、これになったってだけで。
ほらー。だから言ったでしょ?うまいことなんてなんも言えない、って(笑)
この前の大火事のこと?
あれは特別なことでもなんでもなくて、子どもの泣いてる声が聞こえたら、そりゃ飛び込むでしょ?普通。え?普通はムリって?そうかなぁ。
いや、記者さんも、きっとあの声聞いたら、飛び込むと思う。
あれはね、本能だと思う。
確かに火の回りは強烈だったから、一瞬ひるんだけど、そんなのはほんと一瞬だった。
子どもが泣いてる顔が浮かんだからね。気づいたら身体が動いてた、としか言えない。
まぁあとでそれなりに怪我してたから、訓練とは違う動きをしちゃったとこもあったんだろうけど(苦笑)、でも、無事救えたんだから、その方法はどうでもよかったかな、って思ってる。
え?ダメ?
他にも赤西さんの救出を待つ人がいるんですから、って?
いやー、そんなのダメ!みんな、火元には用心してくださいね!(笑)
そうそう!あれから、俺、ときどきあの2人の入院してるところに遊びに行くんだけどね、いやー、子どもってほんと、めちゃくちゃかわいいね!
5歳のお兄ちゃんと3歳の妹なんだけどさ。妹がとくに俺になついちゃって、俺が行くともうずーっと抱っこされたがるの。でね、兄貴の方が生意気にも、ちょっとだけヤキモチ焼くの(笑)。
それが結構複雑なヤキモチで、俺の大好きな消防士のお兄さんを独り占めしてる!っていう妹へのヤキモチと、俺のかわいい妹をどうするつもりだ!っていう俺ヘのヤキモチ(笑)。
そんなこんなで複雑な顔してる兄貴が、とにかくかわいくて、最後にいつもギューって抱っこして帰ってくるんだけど、ホントはそのまま連れて帰りたくなってる(笑)
あ、やべ!これ取材だった。すいません、忘れてた・・。
え?これでいいって?どこがいいんだよ!
だから言ったじゃん、俺、なんもうまいことなんて言えねぇって!
え?「子どもの声を聞いたら飛び込んでた。本能だと思う」の言葉が聞けたから、いいって?
やー、だからこれは絶対に記者さんだってそうしてt・・・(CMへ)
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Peacsfuldays(たろちゃん)